自分の惚れ込んだ味を無料で飲める事はあたしにとって大きな特権だった。


「お客さん、減ったねぇ」


そう言いながら河田さんが隠し扉から出て来た。


今日も数人の『お客様』がきていたのか、疲労の色が濃くなっている。


「今日はもう5人もお客さんが来たんですよ」


「へぇ。そりゃ上出来だ」


河田さんはそう言って笑った。


『ロマン』の売り上げにはこだわらない。


それは、解体の仕事で多額の給与が島から支払われているからだった。


この島には大量のゾンビがいる。


そのことを知っていても島が混乱に陥るため公にはできず、ゾンビ対峙のための手段も見つけられないままだったため、この『ロマン』ができた時は密かに感謝状まで贈られていたそうだ。


島にとってこの『ロマン』は絶対になくてはならない店。


一部の人間だけが、それを知っているのだった。


それゆえ、河田さんも簡単に『ロマン』の定休日を作れずにいるのだ。


「河田さんも少し休んでください。コーヒーアイスでいいですか?」


「あぁ。ありがとうモコちゃん」