「腐敗はしないんですか?」


「腐敗防止の液につけて、周囲を透明ボンドでコーティングしてあるから大丈夫だ」


そう言われてあたしは納得した。


奥の部屋には今まで切り刻んできた『お客様』たちの体の一部があちこちに飾られている。


それらがいつまでも腐敗しないのは、ちゃんと処理をしているからのようだ。


「今日友達と一緒にゾンビ映画を観たんですよ」


「へぇ? 面白かったかい?」


その質問にあたしは軽く首を傾げた。


あたしが実際に見てきているゾンビたちはただ死んでいるというだけで、中身は人間のままだ。


それが映画になるとまるで化け物のようになって出てくるから、少し違和感があった。


「かなりグロテスクな映画だったみたいなんですけど、あたしにはよくわかりませんでした」


そう言い、あたしは目玉ストラップを自分のスマホに付けた。


河田さんはおかしそうに声を上げて笑って、「モコちゃんはリアルなゾンビに慣れてるからね」と、言った。


「おかげであたしの感覚がおかしいって、みんなから言われちゃいましたよ」


あたしはそう言って軽く頬を膨らませた。


「それを言えば俺だって随分と感覚がおかしくなってると思うよ」


河田さんはそう言い、コーヒーを飲んだ。


カランッと氷の良い音が店内に響く。