「お待たせしました」


「随分と手つきがよくなってきたな」


河田さん褒められて、あたしは一瞬ドキッとしてしまう。


河田さんは世間的に言ってもカッコいい部類に入る容姿をしていて、その優しい声色もあたしは大好きだった。


そんな河田さんがゾンビの内臓をえぐり出しているのだから、一番最初それを見た時は気絶してしまったものだ。


それが、今ではゾンビ映画を観てもなんとも思わないくらいに慣れてしまったけれど。


「今日の『お客様』はもう終わりですか?」


「ひとまずはね。10体くらい解体したから、さすがに疲れたよ」


人間の体を10人分切り刻むなんて、普通の精神状態じゃやっていけない仕事だ。
河田さんだからこそできる仕事。


「そうだ。モコちゃんにこれをあげるよ」


思い出したようにそう言って河田さんがポケットから眼球ストラップを取り出した。


さっき見た『お客様』の目玉だ。


「いいんですか?」


あたしはそれを受け取りながら聞いた。


ゾンビの死体を再利用することで、自分が切り刻んだ客を忘れないようにしている河田さん。


「あぁ。目玉は2つあるからね」


そう言い、もう1つの目玉ストラップをポケットから取り出して見せて来た。


それなら気兼ねなくいただく事ができる。