☆☆☆

学校につくと先に教室に来ていた楓がすぐに駆け寄ってきた。


会話の内容は当然のように昨日のバイトの話だった。


楓は河田さんの事を本気で気にいってしまったらしく、河田さんの素性について色々と聞いてくる。


でも、あたしも河田さんの事は正直あまり知らなかった。


両親の代から解体部屋と『ロマン』を継いでいて、好きな人を解体して……。


だけど、そんな事あたしの口から言えるはずもなかった。


昔好きだった女性のシャンデリアがあると知れば、楓も傷つくかもしれない。


「河田さんの事、このままだと好きになるかも」


楓が夢見心地でつぶやく。


「え、嘘でしょ!?」


あたしは思わずそう言っていた。


「どうして? 河田さんってすごくカッコいいじゃん」


「それはそうだけど……」


一緒にいたらドキッとすることは何度もあった。


でも、解体屋という特殊な仕事をしている河田さんとは、一歩線を引いたような付き合い方をしていたのだ。