楓を羨ましく感じながら自分の席に座ると、今日は舞美が話しかけてこない事に気が付いた。


いつもなら真っ先に声をかけて来るのは舞美なのに……。


そう思って教室を見回してみると、舞美が冬と一緒にいるのが目に入った。


2人はなんだかいい雰囲気で、楽しそうな笑い声がここにまで聞こえて来る。


「ねぇモコ、あの2人はほっといていいの?」


楓にそう言われて視線を移動させると、そこには瑠衣と夢羽の2人がいて、こちらも楽しそうに会話を弾ませている。


瑠衣と夢羽が一緒にいるところをみるとまだ胸の奥がうずくけれど、もう邪魔をしようという気にはならなかった。


あたしが割って入っても嫌な顔1つしない夢羽を見ていると、自分の行動が子供らしく感じられてしまったのだ。


「瑠衣は夢羽を好きなら、しょうがないことだから」


あたしは小さな声でそう言った。


「モコって、思ったよりも大人だよね」


楓にそう言われ、あたしは思わず「思ったよりもってどういう意味?」と、言い返していた。


「だって、片想いも失恋も、あたしより先に経験してるし」


確かにそうだけど、失恋は経験したくなかったな……。