「んなこと…信じられっかよ…」
顔を歪めた弘斗が呟く。
もう俺は何がなんだか分からなくなっていた。
ただひたすら、2人の会話に耳を傾けていた。
『気づいたらいつも隣に弘斗がいて。
バカでお調子者で少し意地悪で。
なのに急に真面目な顔したり
優しくなったり。
そんなあんたが好きだった。
でも弘斗はあたしのキモチに気づいてくれなくて。
中学に上がったら弘斗はモテ始めた。
知らない間に弘斗には彼女がいて。
噂では何人の人とも寝た…とか言うのも聞いて。
段々弘斗が遠い存在に思えてきた。』
村瀬は1度言葉を切って深呼吸した。
けど、呼吸しずらそうで
涙の勢いが増すばかりだった。
『それでも…あんたのことが好きで。
今ごろ…遅いんだよ』
そのあとも村瀬は何かを話そうとしていたが、
それは言葉にならず涙に変わった。
弘斗は涙を耐えているのか唇を噛んでいて。
どうして涙を耐えているのか俺には分からなかった。