「うんわかった!ありがとう双葉さん」



時間がない、と桜瀬さんは隣の椅子に腰を下ろしパソコンを起動させる。



あたしも自分の仕事を終わらせようとパソコンに向き直った。



「迷惑かけちゃってごめんね双葉さん」



桜瀬さんがパソコンを見ながらあたしに言う。



「いえ!あとはよろしくお願いします!」



あたしの言葉に、桜瀬さんはオッケーサインを見せてくれた。



それから桜瀬さんは一言も言葉を発しない。



その横顔は集中そのものだ。



だけどその横顔に見惚れてしまう男の人の中に、自分も入っていることをあたしは気づかない。



「詩苑ちゃん」



と、不意に誰かに名前を呼ばれて、ビクッとしながらも振り返る。