「あんたさあ、こういうの引き受ける星のもとに生まれてるの?」
せっかくいい声してるのに。雰囲気だっていい感じなのに。
すねてつまんないセリフ言わないでよ。
不機嫌な顔のために、全体的にもったいないことになってる。
機嫌悪いのは分かるけど、運の悪さは、私のせいじゃないわよ。
まあ、俺の隣にいるのが、なんで、西田嬢ほどきれいじゃないんだって言われても困るけど。
「あのね、引き受けたのは井上さんも一緒でしょ?だったら、あなたも同じ星のもとに生まれてるじゃないの」
頑なだった彼の表情が柔らかくなった。
多分、笑った顔はもっと素敵だろうなと思う。
「ぶっ……
そっか。それもそうだな」
豪快に笑ってる。よかった。意外に受けた。
「笑ってもらえてよかったわ」
「ああ、もう……くそっ!」
次の瞬間にはもうすでに、他のこと考えてるみたいだ。
井上氏は、悪態をつきながらメニューを取り寄せる。
その様子をぼんやり見ていると、ほら、と言って私にもメニューをくれた。
受け取るとき、軽く指が触れた。
節くれだった指してるのに、ごっつく見えないのは指が長いせいかな。
しっかり触ってみたい衝動に駆られたけど、そんなことしたら人でなしだって顔で睨まれそう。


