「もういいか?」
声が少し冷ややかだった。
「ええっと。はい」
気に入ってもらえなかったかな。
「酒臭い。シャワー浴びて寝ろよ」
「はい。すみません」
彼は、バスルームの場所を教えてくれ着替えも渡してくれた。
人生の終わりを告げられたみたいにドアが、バタンと閉じられた。
人生じゃないと思うけど、何かが終わったんだと思った。
しばらく呆然としてたけど、これ以上嫌われたくないと思い直してシャワーの蛇口をひねった。
少しでも清潔にしたかった私は、下着を石鹸で洗うとタオルで水気を吸い取ってそのまま身に着けた。
バスルームから出ると、彼が着替えて待っていてくれた。
「あの……」
「いいよ。何も言わなくて。そっちの部屋使って」
廊下に面した部屋の一つのドアが開いていた。
彼は、無表情だった。
彼の考えてくことは読み取れなかったけど、いい感情ではないと思った。
私は、分かったと頷いた。
「それから、俺、朝早いから先に出て行くから。朝食用意しておく。食べたら鍵をしてポストに入れておいて」
「はい」
「今日は、もう遅い。寝ろ」
「はい」
「それから、どういう理由でこんなに飲んだのか分からないけど、褒められたことじゃない。二度とするんじゃない」
「はい」
二つある部屋のうちの、一つに案内された。
ベッドと小さなテーブルのある部屋だった。
彼が普段寝室に使ってる部屋だろう。
ハンガーに洋服をかけ、言われた通りベッドに入った。
何もかもきちっとしてた。
糊のきいたシーツは心地よかったし、部屋もきちんと片付けられている。
私、何かを間違えたのかも知れない。


