「花澄はすごくしっかりしてる。
俺なんかついてなくても、一人で何でもできる。
だから、いつも、俺でいいのかなって思ってた。
でも、菜々は違うんだ。俺を頼ってくれて、俺しかいないって思わせてくれる」


「やってられない」

振られた理由が、職場の仲間との付き合いの延長だと言われたのだ。

『やっぱり、俺君のこと好きじゃなかった』そう言われた方がよかった。

確かに付き合ってても全然盛り上がりに欠けてたし、いつ始まったんだか分からない関係だった。

お互いに一緒にいても苦にならない。仕事の延長。

でも、刺激にもならない。

そういうの、惰性って言うんだろうな。

最後に寝たのって、いつだったか思い出せないほど前だ。

何だ。そっか。

ちゃんと、準備してたんだ。

じわじわっと、離れて聞く準備。

ちゃんと、私の方が聞かないといけなかったんだ。

どうして?って問い詰めないといけなかったんだ。

口では、言われてないけど距離は開いていた。

私だって、気が付いてないわけじゃなかった。
確かめたくないだけだった。
問い詰めれば、壊れてしまうのは分かってたし。




竜也と別れてから、帰り道にふらっとショットバーに入った。

カウンターで気持ちよく飲んだんだけど、肩をゆすられた。
頭が重い。
揺らさないでよ、と逆恨みする。

「電話ですよ」

店の人が、私をゆすって電話に出そうとしてた。

電話と言えば……
アホ竜也
携帯の待ち受け、試着したウェディングドレス姿の菜々ちゃんだった。

試着室の後ろの鏡に、デレッとした幸せそうな竜也の顔が、半分写ってた。

完璧な花嫁さん。

嬉しくないわけない。

でも、そんなの見せるなよ、バカ!!