やっぱり、私は竜也に押し切られた。


竜也と仕事帰りに二人で立ち寄った、居酒屋に入った。

会社の近く。安くておいしい店。

たまあに、竜也が奢ってくれた。

何に使ってるのか分からないけど、いつもお金ないって言ってたし。会社を一歩出たら先輩だなんて少しも思ってなかったし。


ここで、仕事の相談をしたり、将来の事を話したりした。


うるさいし、店の人は怒鳴ってうっかりすると体当たりされる。快適とは言えないけど。彼が話してくれる将来の話は面白かった。私、信じてたんだけどな。ちゃあんとあなたの将来に私がいるって。一ミリだって疑ってなかった。



だというのに。

私は、彼の心変りが全く分からなかった。


今でも、何が起こったのかわからないままでいる。



「今度の事は、百パーセント俺が悪いと思ってる。花澄はどこも悪くないから」

迷惑かけた部署に行って、竜也がおんなじこと言って謝ってる姿を思い出す。


「気休めだったら、言わなくていいよ。どこも悪くなかったら、こんなことになってなかったし」こんなセリフ何度聞いたか分からない。何度もおんなじこと聞くと本当は、どんなふうに思ってるのか分からなくなる。


「違うんだ。花澄が悪かった訳じゃない。だから、全面的に俺が悪かったんだ」


「だから、今さら何が言いたいのよ。もう、気持ちは固まって、別の人の事考えてるんでしょ?」こんなこと言いたかったために、わざわざ呼び出したの?

「俺……今でも、花澄の事好きだよ」

「そう」だったら、結婚やめてよ。愛した人じゃなきゃ、結婚できないっていってよ。



「でも、花澄への気持ちは友情みたいなもので、仕事の延長だったんだ」


「はあ?」頭をいきなり殴られたような衝撃を受けた。


「菜々ちゃんに会って、その。人を好きになるって気持ちが分かったんだ」
嬉しそうに微笑む竜也。

「それは、おめでとう」

おい、これはちゃんと謝ってんのか?って突っ込みは入れないでおこう。

「ああ、ありがとう」

いから、ニカっと歯を出して笑うな。
一瞬でも二人きりになれたって、喜んだ私がばかだった。

自分が可哀想すぎてとても泣けない。