電話を切った後も、竜也はじっと私の事を律儀に待っていた。
まったく、この人のどこがいいんだか。
やたら、腰低いし。無駄に人の見ていないとこで丁寧だし。
後輩のミスまで、バカみたいに平謝りして謝って。
本当は、一番大変なのは、矢面に立ってる竜也だ。
俺のせいですみませんって、何も感じてないように、へらへら笑ってるけど、井上さん敵に回して大丈夫なわけない。
大事な彼女を守るために、そうやって社内の批判に逃げないで受け止めてる。
そこは、褒めてあげる。
だから、ちゃんと祝福してあげたい。
順番さえちゃんとしてくれれば。
なんでもっと早くに、菜々ちゃんとの話が進む前に、別れ話してくれなかったのかな。
そうなんだよねえ、詰めが甘いし。
事態が最悪になってから、どうしようって慌てるし。
それは、後ろからフォローすればいいことで、そういうのは二年もいれば上手にできると思ったんだけど。
こんな人、好きになるの私くらいだって安心してたのに。
「俺たちのせいで、いろいろ忙しくなっちゃったね。本当に悪かった」
やっぱり、どこかずれてる。
「今さら……」なんなんですか?
ホント無神経。俺たちだなんて、わざわざ神経を逆なでるし。
「少し、話がしたいんだけど。今日、仕事が終わった後、どうかな?」
「私の方は、別に話なんて、ないですから。話なら、ここで聞きますけど」
二人で会ったりしたら余計、配菜々ちゃんにかけるでしょ?
「ごめん、ちゃんと謝りたいんだ」
だから、フォローなんて必要ないし。
聞きたくないって言ってるの!!


