久美子は、青木君がオフィスに戻るタイミングで話し出した。


「いいと思うんだけどなあ」

出た。久美子のお節介モード。

どうやら、青木君と私をどうにかしたいらしい。

私は、溶けかけたアイスコーヒーの氷を突っつきながら、話を聞いてないふりをする。


「あんたの状態のことは、青木君に、ようく説明しておいたから。うんと彼に甘えて慰めてもらいな。彼、本当に優しいし。あんな自分勝手な男より断然、花澄に合ってるって。青木君に決めちゃいなよ」
彼女も、アイスティーをかき混ぜながら言った。


「あのね」


「現実を見なさい。花澄にとって、井上さんはダメ男だよ」


「まさか、そんな理由で、青木君に幹事頼んだの?」

井上さんが、ダメ男かどうかは置いておいて、青木君まで巻き込むのは暴走しすぎでしょう?なんて、恐ろしくて久美子に言えないけど。


「まさか、違うよ。青木君とどうにかなれっていうのは、私が、口を出す問題じゃないけど。誰か一人、あなたたちの間に入ってもらった方がいいと思って。井上さんとずっと二人でいるのは、ちょっと心配だなって思ってるだけ」
久美子の本心は分かんないけど、一応、私のこと考えてくれてるのは分かった。


「だから、心配されるようなことはないって。傷ついたもの同士、傷をいたわりあってるだけ」なぜか、恋愛の真似事のようなことをしてお互いの傷を癒している。


「それが危ないじゃないの。普通なら、ありえないんだから。井上さんと、花澄が上手く行くなんて」


「分かってる。だから、井上さんにはそう伝えてる」


「そ、それならいいけど」