「青木君?」


「良かった。忘れてなかった?俺の事」

もちろん、忘れるはずがない。
このところ、じっくり話す機会がなかったから、そうやって茶化しているのだ。

いつ見てもスポーツマンのように爽やかで笑ってる彼は、同期の青木晴臣だ。

久美子にお昼を一緒に食べようって誘われて、下に降りて行ったら、いきなり彼が話しかけてきた。三人で食事に行くことになったんだと思った。


「忘れてないけど、何、握手したいの?」

なぜか彼が、手を差し出して握手を求めてきてる。

私の姿を見つけて、久美子が寄って来てた。

「何と、青木が幹事引き受けてくれたよ。花澄の話をしたら、一人に押し付けて申し訳なかったって言ってくれて」久美子が言う。


「本当に?いいの」
だって、私がかかわったととで巻き込まれた久美子と違って、青木君は全然関係ないし。

私は、彼の手に答えて握手をした。


「ああ。のっぴきならない苦しい立場に立たされてるんだって?」
にやにやしながら楽しそうな青木君。


「久美ちゃんったら、青木君に変なこと吹き込んだでしょう?大げさだよ」


「決して大げさじゃないと思うよ。苦しい状況から、一方的にちょっかいかけられてるものね」久美子、絶対面白がって、青木君呼んだでしょ?


「そうなの?面白そうじゃん。取り敢えず、飯食って考えよう」
ほら、青木君、からかう気満々。