「そういうのは、本当に好きになった人と出かけて下さい。私はもう大丈夫ですし」


「待てよ。もう少しくらい、一緒にいてもいいだろ?」
彼は困ったように、うなだれて視線を下に向ける。


「だめです」

私だってこうして付き合っているのは楽しいし、もっといたいと思う。けど、井上さんがずっと私の横にいる、そのことを当たり前に思ってしまうようになる。

そうすると、この関係を一方的に止めたいと彼に言われても、私の方がついて行けなくなる。

「頻度が多いっていうなら、二週間で一度でもいい」


「いいえ、これ以上豪華な食事ばかり食べてると、本当に太ってしまいますから」
最後に笑えた。
それだけはできた。

力なく笑う、彼の表情が痛々しい。


「太っても平気だよ。君のその体型より、もう少し太ってもいいくらいだから」


「ええ、でも井上さん、来週から久美子が、二次会幹事のメンバーを増やすと言ってました。二人で幹事をやるのは大変だから、参加者を募るって。だから、幹事として二人で下見に出かけるのは、どっちみち今日が最後です」


「あいつ余計なことを」