サプライズは、パーティーの後で ~恋に落ちた御曹司~



そんなことは、どうでもいいと、軽く流して会場を一瞥(べつ)し、ギロリと竜也を睨む井上氏。

「参加者何人ぐらいなの?会場キャパ足りる?」とすかさずチェックを入れる。

低いバリトーンの声。機嫌さえ良ければうっとりするような声だ。彼がしゃべると、思わず耳を傾けてしまう。

「えっと、ざっと百人はいるかな。式から直接来てくれる人と、二次会だけ参加してくれる人とで」竜也が、上司に答えるように緊張して答える。



「パパが、もし、この会場にするなら、全部のフロア貸し切りにすれば入るんじゃないかって言ってたわ」と、にこやかに返す西田嬢。

この人は本当にお嬢様だ。
明るいふわっとした髪をして、全体的に小さめだ。目がくりっとしてる。
立ち振る舞いもきれいで、存在自体に品がある。

それにしても、パパだあ~?

どこのパパだよ。まったく。
西田専務のでれっとした顔が浮かぶ。

それより、その大事なパパは、結婚に反対してないの?

花婿こんなんだよ、いいの?


「立食にすれば?」さすが井上氏。

絶対ドタキャン、遅刻、早退多いだろうな。
百人来るって言ったって、遅刻してきたり、急にキャンセルになったり、そういうのも入れると、一割くらいの料理や飲み物が無駄になりそう。

だから、しっかり人数を把握しなければいけない着席のスタイルよりも、多少調整のきく立食方式にした方がいいというのだ。

ロスを出すと、赤字になってしまう。幹事もお金が足りなくなった分、穴埋めしなきゃいけなくなるかも知れない。

だから釘を刺してるのだ。まあ、私も同じこと考えた。


「さすが、井上だな。何なら、二人に任せた方がいいかも」
竜也は、どこまで行っても竜也だ。


井上さんが敏感に反応した。

「おい、ふざけんな。俺は、好きでやってるんじゃない」
井上氏は、苛ついてるし、少々切れ気味だ。


「真裕?ごめんね。こんなこと頼んじゃって」
お嬢様に、ごめんと手を合わせられて、さすがに井上さんも黙った。



マヒロ?そっか、名前、マサヒロじゃなくてマヒロなんだ。

でも、呼び捨て?いいの?

井上さんの方がだいぶ年上だけど。
君たち、知りあいなん?


「どっちでもいいから、二人で決めろよ」