「井上さん?」
私は、かしこまって彼に向き直った。
ラストオーダーでございますと、店の人に言われて、飲み物を彼が断わったところだ。
「何?」
機縁良く答える彼。
私は、彼に深々と頭を下げてお礼を言った。
「いろいろありがとうございました。でも、こういうのに、ご一緒させていただくのは、これで最後にします」
「どうして?」
「これは、私が関わっていいことじゃありません」
「別に、君が気にする理由はないよ。二回目からは、お金を出していたのも俺だし。俺が君を誘いたかったんだ。だから気兼ねなんてしなくていい」
「それなら、余計に理由が見つからないじゃないですか?」
「いいじゃないか。たかが、飯を一緒に食うくらい。気にするな」


