「というより、君は、まともなプレゼント受け取ったことないのか?」
いつの間にか、彼は、私のペンを持ってない方の指を手に取っている。
「まともな?」
彼は、何もつけていない薬指の辺りを軽くなぞる。
「さっき言っただろう?それ以外にも、時計、ネックレス、他に何でも。君が欲しいと思うものなら」
さすがに私もイラッとしてきた。
「えっと、井上さんがどういう、つもりなのかは知りませんが、いきなりそういうものを、頂いても、ただ驚くだけで、嬉しいとまでは思えないんです。だって、そういうものは、好きな人からもらうから嬉しんです」
「じゃあ、君が、楽しめないのは、好きな男からもらったプレゼントじゃないからか?」
彼は、指を絡めようとして、私の手を引っ張った。
もうダメだ。黙っていられない。
この人は、失恋のショックで頭がどうにかなってるのだ。
私は、ペンを置いた。
「さっきから、変ですよ。井上さん。自分の気持ちの整理がつかないからって、私にプレゼント攻撃してどうするんですか。
私が、幹事を引き受けたのは、井上さんのせいじゃありませんから。気にしないでください。
こうして、毎週のようにおいしいもの食べさせてもらって、そっちの方が気になります」
彼は、ふっと息を吐くと少し考えてから言った。
「君が心配するほど、菜々のことは気にしてない。
そのことは、正直どうでもいいんだ。でも、自分でも困ってることはあるよ。
どうにもわからない感情に、もやもやして、どうやって対処していいのかわからないんだ」


