井上さんが、飲み物を確かめる。
「ワインも料理も申し分ない」
「そうね」
詳しく知らないけど。飲むと本当においしい。
「食べるのは、好きじゃなかったのか?」
唐突に、彼が言う。
「好きですよ。本当においしいものばかりだし」
本当に今日はどうしたの?っていうくらいいちいち私の反応を気にしてる。
私、何か気にさわること言った?
彼が、不満そうに言う。
「だったら、もっと楽しそうにすればいいのに」
楽しむ?
「だって、今日は評価の方が大切でしょ?デートで来てるんじゃないもの。お金出してくれるのは、専務だろうし。頼まれてるなら、出来る限り努力しないと」
それとも、考えながら食べてるから、そう見えたのかな。
見る見るうちに、不機嫌になる彼。
なんか、まずいこと言った?
ああ、そっぽ向いちゃった。
「ごめん。顔が恐かったかな?つい食べながら、評価するのに夢中になっちゃって。ごめん。楽しくないわけじゃないよ」
「君は、目の前に誰が座っていても、そういう態度なのか?」


