「鮮魚のマリネ、タルティーヌ、キッシュは、当日出るものとそれほど変わらないだろうから、前菜と一緒にワンプレートで出してもらおう。何だったら、鮮魚のブレゼとローストビーフも試してみる?」
井上さんが、宴会用の料理のメニューを見て、すらすらと言う。
私は、ため息をついた。
一度に食べるんじゃなくて、一日一品くらいの割合で食べたいな。
「たった今、ディナーコースを頼んだばかりなんですけど。それ以上に、注文するの?そんなにたくさん食べられないって」
私は、もう一度ため息をつく。
「一番下のコースだよ。たいした量ないさ。そっか、残念だな。じゃあ、ブレゼとローストビーフも止めるか?本当に残念だなあ。ここのブレゼは絶品なんだけど」
「……おいしそう」
アップされた写真で誘惑する井上さん。
「だろう?じゃあ、少しだけ持ってきてもらおう」
「ブレゼって?」
「素材がかぶる程度の出し汁とか酒を入れて蓋をして、オーブンでじっくり煮るんだ」
「本当においしそうね」
別に、パーティーのメニューからも料理をセレクトして、テーブルの上は周りの人よりも豪華になった。
自然に表情がゆるんで、幸せな気分になる。


