「その友達のこと心配して言うけど、木下さんと付き合うのやめた方がいいって、私、あんた達が付き合う前に、散々忠告したよね?

彼は、いい人だけど優柔不断で、断り切れずに押し切られるから、絶対苦労するよって何度、釘刺したのよ」

久美子が調子に乗るなという目で見てる。
すみません。身の程知らずにも暴走してしまいました。
でも、今さら過去のことほじくり返さなくてもいいじゃない?

「ん……」
その通りだから、一言も反論できない。


「いい?あんた失恋したばっかりなのよ」


「そう言われたって、久美ちゃん、私、どうやら恋愛から学ばないタイプ見たい」

もう、許してお願いって、手を合わせてポーズまで取ってみたけど、そういう理屈と関係ないとこでは、久美子は何の反応もしない。逆に、アホって顔でにらまれた。


「だから、それを言い訳にするな。何でまた、すぐにダメになるような男見つけるのよ」


「ダメになるって?誰のこと言ってるの?ダメになる男は、竜也の後、まだ誰とも付き合ってないわよ」


「嘘。さっき会議室入って行ったじゃん」


「そうだけど」
ダメ男って。井上さんクラスをダメ男呼ばわりしたら、地球上に男がいなくなるよ。


「あのさ、花澄?ああやって、井上さんが会議室から先に出て、後から真っ赤になった女の子が出て来て、後になって、給湯室で泣いてたことがあったのよ。

彼が、会社の女の子に、ちょっかい掛けてたのバレてたもの。菜々ちゃんという重しがなくなった今、あいつが何もしないわけないでしょ?」


「本当に、何もないわよ。結婚式のリストのことでちょっと話をしただけで」

とても、キスなんてするどころじゃなかったから。
おっと、そういう余計なことは言わない方がいい。


久美子が驚いている。

「そうなの?何にもされなかった?本当なの?結構彼って、女の子の好みは、なんでも良さそうだったのに?さすがに花澄は圏外か」


「圏外?」
好みじゃないって言われたからそれは間違いじゃないけど。


「だって、寄ってくる子なら、割と誰でもいいみたいに相手にしてたもの。菜々ちゃん入って来てピタッとなくなったけどね、そういうの」

割とどうでもいいの中にも私って、入ってないの?
どういうことよ。

圏外はキスどまりとか……

もう。だから、何なのよ。
気分が悪くなりそう。考えるのやめよう。