一週間後。


「営業企画部の井上です」
「庶務の丸山です。よろしくお願いします」

「花澄、えっと、こちらは、企画営業部の井上。一応同期なんだ。あっ、それから井上こちら、庶務の丸山花澄さん、一緒に働いてる仲間なんだ」

名刺を交換中の私と井上さんを、交互に見ながらへコヘコしているこの男は、木下竜也。

職場の先輩で、そしてついこの間まで私の彼氏だった。


「ああ、よかった菜々、ようやく二人が引き受けてくれて」
竜也は、すぐ横にいるお人形のような美人に微笑む。
ほっとしたのか、顔が必要以上に緩んでる。


よくねーわ、と口が滑らないように、ぐっとこらえる私。

さらに上をいく不機嫌さで、始終むっとしてる井上氏。



ここは、都内のレストラン。



二次会の場所を見学しがてら、一度4人で顔合わせということになった。


メンツは未来の新郎新婦と、その二次会幹事。


文字通り、白と黒、オセロみたい。
いい悪いじゃなくて、やる気がある、やる気なしで分けたらそうなるって意味。


新郎新婦は二次会に備えて、レストラン側の人の説明に、いちいち頷いている。
そして、説明に納得すると、目を輝かせて質問してる。


残りの二人、つまり私と井上さんは、楽しそうな二人をよそ目に、一刻でも早く決めろと目から光線を送って、その場を立ち去りたい雰囲気だ。

明るい二人は、そんなことにはお構いなしに楽しそうにしてる。


『他に聞いてみて、どうしても引き受けてもらえなかったら』
なんて、仏心を出したためにこうなってしまった。