オフィスを出て、私と同期の友人の石田久美子は、何とか地下街のイタリアンの店に入ることができた。

早めに来た客が、食べ終えて帰ったところにすっと入れたからラッキーだった。


「それにしても、井上さんね」

久美子は、腕組みしながら考え込んでいる。


「あの、ただ一緒に二次会の幹事やるだけですから。何でもないよ」きっと。


「でも、嫌な予感しかしないな」


「そう?」


確かに。二回会って二回キスされてる。

これは凄いのか。顔は好みじゃないっていうのに。
全く不思議だ。

確かに、今までデートだってこんなに求められたことない?


ないか……


初回なんて、手つないで終わるよ。普通は。


はあ……

二回会って二回キスされるって、なんだろう。


目の病気で私が絶世の美女に見えてるとか?

すごい資産家の娘だと勘違いしてるとか?



「どうかな。私はあまり、いい取り合わせとは思えないんですけど」


「取り合わせって」
犬のカップルみたいに言わないでよ。