「二次会……の、幹事引き受けたのよ。そうしたら、井上さんと一緒にやることになって」

久美子の大きな目がさらに大きくなる。


「二次会の幹事だと?」

目落ちそうだよ。久美子。
さすがの久美子も、私が二次会の幹事を引き受けるほど、お人好しとは思わなかったみたいだ。


「あっ、まずい」言っちゃった。
このタイミングで打ち明けるのは、まずいって黙ってたんだ。

「幹事やるなんて聞いてないよ。どういうこと?一言も相談しないって。しかも、やることになったって。思いっきり過去形じゃん」


言ったら、絶対なんか言われると思って、もうしばらく久美子には内緒にしておこうって思ったんだっけ。すっかり、忘れてた。


「えっと、でも本当にそれだけなのよ。井上さんとは二次会の幹事で一緒なの。それだけよ」


「井上さんね」


「今んとこ、何の、問題ないから」

二回もキスされた以外は。



「今から、問題あったらどうすんのよ」

キスしたのって、問題かな。
聞けないけど。そこまでは。


「そうにしても、あの井上さんがあんなに、わめいてるの初めて見たわ」


「そうなの?」


「いっつも、仕事中は、無表情だからね。あんたと違って彼の方は」


「気にしてくれてるのよ。私が竜也の用事を何でも受けちゃうから」


答えてから、久美子自慢の誘導尋問に引っかかったと知る。


「気にしてる?あの、クールで人がどうなろうと気にしない人が?花澄のこと心配してるっていいたいの?」


「わかった。彼が、私の事心配してるんじゃないよ。菜々ちゃんが、私と竜也のこと、気にしてるから、私の心配をしてるだけなの。だから、本当に何でもないから。」