「それに、正式にプロポーズするのは、クリスマスの方がいいだろうなと思ってる」

そういうの、ちゃんと私の顔見て言ってほしいんだけどな。

言葉にしようと思って彼の顔をのぞき込むと、照れくさいんだか何だか、彼は、私の肩に顎をのせて、背中を指でなぞっている。


「じゃあ、今日の返事もプロポーズの時でいいの?」


彼は、「ええっ」と声を出して、それ本気かって顔を私に向ける。

冗談だってば。


「それは……嫌だ。クリスマスまで焦らされんのか。頼むから勘弁してくれよ。そんな、まさか、まだ迷ってるとか、断るなんてことないよな」


「断るなんてしないけど。でも、大きな声でYESって言いたかったな。みんなの前で」
ほんとにそんなこと聞かれたら、答える余裕なんてないと思うけど。


「止めてくれ。さすがにその場でどっちか聞く勇気はなかったよ」


「こんな事しようなんて、いつ考えたのよ?」


「割と前かな」


「前ってどのくらい?」

「あの日、君に最初に会った時。恋に落ちた瞬間」

「そんな前に?」


恋に落ちた?

恋に落ちていて、君の顔は好みじゃないっていう訳?

「本当にそうなるかどうかは分からなかったけど、そうなったらいいなと思ってた。だって、悔しいだろ?幸せそうなあいつらじっと見守ってるの」

「そうだね」

「だから、式に出るころには、プロポーズにYESって言ってほしいと思ってた」

「その割には、いろいろ回り道したみたいだけど」
一時は、戻ってこないかもしれないとあきらめかけていた。

「長かったな。菜々が生まれてから、他の子に気を移したことはなかったから。

君への気持ちに間違いはないと思っても、どこかで本当にいいのかなあって思って。

君への気持ちにずっと戸惑ってきたんだ。なにしろ、とてつもない片思いだったからね」

「うん。それでも、私は、あなたと一緒にいた方がいい」

「いいわ、もう迷ったりしなければ」

「ああ」