「真裕、どういうこと?」



彼は、私の手を見つめたまま言う。



「君が、この指輪を見てた時のことを思い出してた。俺も、この指輪をはめて、嬉しそうにしてる君が見たいと思った。
だから、これ絶対買っておこうと思ってた。注文しておいてよかった」





彼が、まっすぐに私を見つめた。







「俺は、素晴らしい女性に出会った。丸山花澄さん。
愛してる。俺と結婚してくれ」




真裕が、みんなに聞こえるほど大きな声で言う。


大きな歓声が上がり、彼の声は聞こえなくなった。


この人ったら、何を言い出すの?



何の相談もなく、いきなり。


いきなり直球で、何の前触れもなくて。
考える時間もくれなくて。


BGMが大音量になり、周りのヤジが大きくなる。


私は、涙で何も見えなくなった。



真裕は、放心してる私にキスをして、もう一度、愛してると言ったから。


なんて人なの?


新婚の二人に紙吹雪を浴びせられ、私をしっかり抱いた真裕が言う。


「今日はこれで失礼する。木下、後、頼むな」



真裕さんは、私を足元から救い上げると私を抱き上げた。

そうしてくれないと、足が震えて歩けなかった。


いつの間にか、みんなが道を作って、アーチのようにしてくれた。

私たちは、その間をおめでとうと、声をかけられながら通り過ぎる。


「どうした?ポカンとして」
私は、彼に抱かれて腕の中にいる。


「だって、頭が真っ白で」


「何も考えられないのか?」


「んん」


「よかったよ。真っ白な頭なら、すぐに断ったりしないからな」


「断ったりしないけど……私、何が起こったのか分かってない」


「そっか。どうだ?ここまですれば、他の男が、俺から君を取り上げようとは思わないだろ」


「でも、少しイカれてるかな」
私は、小さく笑う。

「ん、言っただろ?俺、君のこととなるとおかしいって」