皆様、本日は大変お忙しい中、木下君と西田さんの結婚式二次会にご出席いただき、誠にありがとうございます。
本日、司会進行を務めさせていただきます、新郎、木下君の職場の同期、井上真裕と申します。
閉めた扉の隙間から、真裕のよく通る声が響いてくる。
「あっ始まったね」
水野さんが中に入ろうかって誘ってくれた。
私は、お手洗いに寄ってから入るからと断った。
真裕、司会大丈夫かな。
私は、あんまり中に入りたくないや。
荷物も、クロークに預けてあるし、お金のことも水野さんいるし。
やっぱり帰ろうかなと思う。
司会をしてる、真裕は偉いなと思う。
私にはそんな勇気はない。
「ちょっと、花澄?井上さんが呼んでる」
久美子が、わざわざ私を探しに来た。
「何で呼びに来るのよ」
「あの人、花澄が帰るつもりじゃないだろうなって心配してて。こっちおいでよ。彼、一人で帰るのは許さないって言ってるよ」
「許さないって言われても、私、もう十分働いたじゃないの」
「ほら、もう一息だって」
映画みたいに、花嫁持ち去るっていう演出だったら嫌だな。
そんなの見たら、死んでしまう。


