それでも、無理やり笑顔を作ったら、顔がこわばって動かなくなった。
「悪い。ごめん、俺が悪かった」
心なしか元気なさそう。
素直に謝られて、ちょっと気の毒になって、打ち解けようと自分の話をした。
「私もさ、二年も付き合ったんだ。それなのに12月に結婚するから別れようって。しかも別れるって言った矢先に、二次会の幹事引き受けてくれだって」
なのに。彼は、あくまでマイペースだった。
「マジか。最悪だな」
ここで、笑うなって。同士じゃなかったのか。
「ふうう……」
「お前、よくそこまで気が付かなかったな」
何か、不幸の相乗りで元気になってる、井上君。
「なによ、責めてるの?ええっ?私が悪いって言うの?」
「違うって。そんだけ信用してたんだろう。相手を。アホみたいに」
ほら、もう手が付けられない。
「ありがとう。でも、それって慰められてない気がする」
「ごめんな、俺も人を慰めてる場合じゃないわ」
ともう一度大きなため息。
「ん」暗い。暗すぎる。
なに?この不幸のスパイラルは?
出口のないトンネル?
夜明けの来ない夜?


