希望通り、個室に案内されてすぐに西田菜々が切り出した。
彼女は、一度私に微笑むとすぐに真剣な顔になった。


「ねえ、丸山さん、率直に言うわ。真裕に言ったこともう一度考え直してくださらない?」


「考え直す?」


どれを考え直せっていうの?


「真裕、ひどい状態なの。がっくり落ち込んじゃって手が付けられないのよ」

心配そうにいてもたってもいられずに私に会いに来たって感じだ。

真裕さんが苦しんでるのは、私が彼を拒んでるからだでも言いたげな顔だ。

「えっと……菜々さん。彼が、がっかくりしてる原因は、別にあると思いますけど」


「どういうこと?真裕に他の悩みがあるっていうの?」

「ええ、真裕さんが落ち込んでるのは、私のせいじゃありませんから」

西田嬢のきれいな顔から、ため息が漏れる。

お人形さんのようにぱっちりした目が、不満そうに私を見つめる。


彼女の様子から、真裕さんは世話のかかるお兄さんって感じだ。


「西田さん?」考え込んでいる菜々さんに声をかけた。

「あのね、丸山さん。真裕ったら、ここしばらくひどく落ち込んでるの。なにか心当たりある?」

「あの……ですから、私のせいじゃないと思います」
だって、彼が好きなのは私じゃない。


「じゃあ、誰のせいだっていうの?」
意味ありげな視線を向けてくる。

「菜々さんじゃないんですか?私は、そう感じましたけど」


「私のせい?なんで私が出てくるの?」

心底彼の気持ちには気付いていないのだろうか?

この、小悪魔って言いそうになる。気が付かないふりするなんて。

真裕さんの気持ちをずっと捕まえてて。
この上、何が欲しいって言うのよ。


「だって、彼が好きなのって、菜々さんでしょう?」


「ええっ?」