「そんな子が何人もいるんですか?」
受付をやってくれる女の子が聞いた。
半分誇張じゃないの?そうでしょうと思う。
「そうよ。私が知ってるだけでも何人も」
久美子が答える。
「なんかおかしくない?どうして、そんなにたくさんの女の子と仲良くして、誰もいがみ合ってないの?逆にすごいじゃないの」
嫉妬とか、羨ましいとかそういう感情抜きで、それが事実だったらすごくない?
石油王もびっくりのハーレムだよ。
どうよ。久美子に一矢報いた。
その疑問は、すぐに解決した。
久美子が、その場にいた会計係の水野さんに何気なく話を振ったところ、
「井上さんですか?」とにこやかに教えてくれた。
水野さんって、給湯室で仲間同士、御曹司のおしゃべりをしてる女の子たちの中間の一人だと久美子が気付いたのだ。
「ああ、彼とは、別に変なことはありませんよ。食事を奢ってもらってデートの真似事するだけですから。
本気の付き合いじゃありませんって。
彼の立場上、言い寄ってくる女の子たちに、突き放すようなこと言えませんから。
多分、井上さんは、ごめんな、俺婚約者がいるから、君の気持ちには答えられないって、全員に言ってるると思いますよ」
「そうだったの?」
久美子が、目を丸くする。
ひどい奴だと思って、御曹司の黒い過去を暴いてやろうと思って、久美ちゃん失敗したみたいだ。
「やだ、井上さんくらいなら、わざわざ、社内の女の子と付き合ったりしませんって。だって、テレビに出てる女優さんがしてた目もくらむような婚約指輪を、ポンって買ってあげられるほどの、本物の御曹司だもの」


