心がざわついて、ざらっとした感覚が頭から離れない。
「最後に1つ聞いていいかな?」
彼は、無言だった。
ソファに座ったまま、何となく、私が彼の大きな体を抱えるようにして話を聞いていた。
私が、こうして抱いている分には大丈夫みたいだ。
体がこわばっていた。
緊張していたの彼にも伝わったのかもしれない。
「ん、ずっと聞きたかったんだけど、聞けなかった事」
私は、彼の額の上の方、固くてごわっとした黒い髪の生え際のところにキスをする。
「菜々とのことか?」
わずかに向きを変えて答えてくれる。
「うん」
「菜々とは、何て言ったらいいのかな」
珍しく、彼が言いよどむ。
無理だったら言わなくていいよ。


