「どれ?」
隣に座った青木君が、ぴったり横に来る。
大まかでいいって言われても、見当がつかない。
「ここ何だけど、どう割り振ったらいいのかな」
私は、喉が渇いたから、一杯だけ先に飲んでるよ、ごめんねとビールのグラスを持ち上げた。
「うまそうだな、それ」
青木君は、私の質問よりも、ビールに興味を持った。
青木君の腕が伸びて来て、私の背中に回わった。
何してるんだろうだろうと思った。
彼は、いつものようにふざけてるんだと思った。
「それより、急いできたからこれもらっていい?」
「いいけど。少し飲んじゃったよ」
「いいよ。そんなこと」
ジョッキを口元に持っていく。
「いいんだ。その方がおいしいから」
彼は、いつも見たいに冗談ぽくない、真面目ないい方で言う。
そして、空いてる方の手で、ぐいっと私の体引き寄せる。
青木君は、あっという間に力づくで、私を自分の腕の中に収めた。
「ふざけないでって、それ、あげるから離してよ。近すぎる」
この時だって、私は青木君がふざけてるんだと思ってた。
ふざけてる以外にこんなことをする理由が見つからないから。
「何でだよ、いいじゃん。このくらい」
「新しいビール頼んどくね。久美子の分も頼んどこうかな」
彼の腕から、すり抜けて注文を取ろうとする。
「久美は来られないよ。仕事きりが悪いって」
「そっか。忙しいんだね。それじゃ、仕方ないか」


