「どうしたの?ため息ついて」
パソコンの画面から、顔を上げて声の主の顔を見つめた。
竜也が心配そうに見ていた。
随分画面をそのままにして、見てたんだ。処理が全然進んでない。
竜也に言われるほどって、相当ひどいな。
「何でもないです。1階の男子トイレの蛍光灯交換してくれました?」
「もちろん、ちゃんと終わってるよ。それより、どうかした?すごく疲れてるみたいだけど。大丈夫なの?スケジュールに不安でもある?」
「いいえ。今のところ順調です」
「他に、何かあるのかな?」
「別に、ありませんよ。何を心配されてるんですか?」
あなたから受けたダメージも回復しつつあるし。
竜也が、井上さんのことについて、思ってもみないことを言う。
「えっと、井上が毎日、すごく楽しそうにしてるから、その原因は花澄ちゃんじゃないかって菜々が気にして言うんだ」
竜也も負けずに嬉しそうだよ。
幸せで何よりだね。
「気にしてるってどういうこと?私が井上さんを喜ばせたら、心配しなきゃいけないってこと?」意味が分からないよ、竜也。
「違うよ。そうじゃない。菜々も俺も、花澄ちゃんと彼が真剣に付き合ってくれないかなって期待してるんだ」
「どうしてよ」
井上さんからの風当たりが弱まるから?
「さあ、分からないけど彼が楽しそうにしてるからじゃないかな」
単なるお節介か。
「あのね、私たち付き合ってるとは言えないの。菜々さんに言っておいて。何でもありません心配しないでくださいって」
「ええ?そうなの?だって、ウェディングフェアまで行って、その後、ホテルに泊まったんだろ?付き合ってなきゃ、そんなことしないだろ?」
「どこで聞いたの?そんなこと」
「えっと、どこかは分からないけど。親戚中みんな知ってるよ。彼、君のウェディングドレス姿の写真見せて、眞子社長に可愛いだろうって自慢してたし、これが真裕の嫁かって、お義父さん言ってたよ。井上そのことでみんなに冷やかされて嬉しそうだったから」
そうだった。竜也は西田専務の家に婿養子に入るから、少しずつ、あの家に出入りしてるんだ。
そんで、先週の私たちの行動が全部ばれてるってことなんだ。


