サプライズは、パーティーの後で ~恋に落ちた御曹司~

「ムカつくな。まったく……」
あの指を、トントンさせながら、テーブルを叩く井上さん。

なぜかメニューが気に入らない井上さん。


「んん……」さすが高級店だ。

私だって不満だ。
ラーメン一杯1000円なんてメニューにないし。

サラダとコーヒーだけ頼んで帰ろうかな。


パッと、井上さんが顔を上げた。

イラついて不機嫌だったのに、彼が、不意に自然な笑顔を見せた。

意表を突かれて向けられた、うれしそうな顔にちょっとドキッとする。


「一番いいコース頼んじまおう。それでいい?」

なぬ?

「一番いい?」ってもしかして、シェフお任せコース?

18000yenって。

ええっ?あの、ちょっと待って。

ゼロ1個多くないですか?


うっわっ。ちょっと待って、まずい。マジでそんなことするの?

今月の口座の残高と相談しなきゃ。


っていうより、なんで今なのよ?


なんでこんな、何でもない日に?

今日は、土用の丑の日……



記念日でもない日だよ?

何でそんな日に、ウナギじゃなくて今まで食べたことない、とっておきの高級フレンチ食べちゃうのよ。


「ワインは適当に頼む。任せるよ」


さすが営業企画部。
そつなく注文をまとめるスマートな彼って感じ。


ああ、でも、これで割り勘とか言われたら、後で、どんなにひどい奴って罵られてもいい。
さっさと逃げよう。