教室と、初恋。



「岡野! ……ゆっくりでいいから。急ぐな」


先生に少し大きな声を出されて、肩が跳ねる。



「でも……授業始まっちゃった。先生独占しちゃってるし、クラスのみんなにも申し訳ないです」


大丈夫、運動神経はいい方だから……なんて言い訳しつつ、階段を駆け上がる。


だけど先生がわたしに声をかけた。



「岡野。あいつらも中学生じゃないんだから、数分教師が来なくても大丈夫だから。
 頼むから無理しないで」



優しい声で言う先生。


何かにすがるような『無理しないで』。


先生のほうが、なんだか辛そうな目をしてる……?



「……わかりました」