わたしが呼ばれたような反応をしたのを見て、少し慌てたようになる先生。
「あ……ほら岡野、階段。登れる?」
思いついたように目の前に迫った階段を指さした。
……なんだったのだろう、わたし変なこと言ったかな。
「はい、大丈夫です。片足でしか行けないですけど……」
とりあえず、階段は本当に大変だからそっちのことを考えなきゃ。
もうきっと時間もあまりないし……。
わたしは杖を使うのが下手で、階段昇降ができないから、杖を二本とも片手で持って、片手で手すりを掴んで、階段に足をかける。
だけど先生がすぐにわたしから松葉杖をとり、代わりにその手を握った。
「……あんま危ないことしないで、俺を頼っていいから」

