だけど、それを無視できない自分がいた。


それはずっと昔からで。


自分でも理由がわからない。


なんで俺が…と思いながらも


俺は今日もまっすぐ駅に向かい、まだ来ないアイツを待ってしまう。


アイツが俺に連絡をしてきた時は


“あの時”って…わかっていながら。



「お待たせっ!!」



すると、約束した時間よりも10分遅刻して、俺を呼び出した張本人がやってきた。


「いきなり電話かけてきたと思ったら遅刻かよ?」


俺が不機嫌そうに言っても、コイツは全く動じない。


すぐ甘えた声を出して、ごく自然に俺の腕に自分の腕を絡めてくる。


これが他の女だったら、すぐに振りほどくんだけど



───コイツだけは…別。



どうしても振りほどけない相手なんだ。