「何故兄さんは私を置いて行ったのかしら?実誉も兄さんも行くんだから私だって……」

山城は校長室で独り言を呟いていた。扶桑がいない間山城はここで留守番をさせられていた。お茶でも飲もうかと山城が立ったとき、外が騒がしくなった。

「何かしら?もしかして兄さんたちが……」

ドアを開け、廊下を走って外へ出ると多数の怪我人が運び込まれていた。

「どういうこと……?」

「空操禁書と遭遇したんです。それでこうなりました」

一人の怪我人が答えた。

「空操禁書……海軍より強い魔道書なんて……それで、どれぐらい怪我人が出たの?」

怪我人は山城に耳打ちした。それは、衝撃的な数の犠牲だった。

「……!ちょっとそこの人待って!」

曳航を終え、駆逐艦に戻ろうとする艦長を止めた。

「何ですか山城さん」

「お願い、私を扶桑のところまで連れて行って!」

「駄目です。扶桑さんに禁止されていますから」

扶桑は山城を乗せることを厳しく禁止していた。山城を乗せたら更迭とまで言っていた。

「兄さんが何と言おうと私が言うこと聞かせるから!あなたを罰したりさせないわ!だから連れて行って!」

「……あなたがそこまで言うなら」

扶桑は頑固な人だ。その妹の山城も頑固だ。特に兄のこととなると何を言っても聞かない。だから、今回も乗せることになった。
山城は早足で乗っていく。その後を艦長は追った。

「さあ、出来るだけ早く扶桑のところへ行くわよ!攻撃は避けて!自分から攻撃をするために速度を落としたり止まらなければいけないときは、もう攻撃しないで!」

「山城さん、艦内ではあなたが命令しても聞きませんよ!」

その後山城は、少しでも速度を落とすと不機嫌になっていた。