「出欠を取ります。静かにしてください」

教室で、魔の儀式が始まる。

「ルナ・リリー区、番号1番、藍野……」

教官が名氏を言った後、名前を言わなかった。あきらめた愛恩は

「あおです」

と読み方を教える。名簿を盗み見た男子が

「全然読めねー」

と言う。愛恩も私も、好きでこんな読めない名前になったわけじゃないのに。私のときも笑われたりするんだろうか……もうすぐ私の番というときに、1人の教官が遅れてきた。

「すいませーん、遅れてしまいましたー」
「こんなときに遅れてくるとは……あと少しでお前の番だったぞ!」


「気ぃ付けますー」

この教官、反省していないな。どうせなら、もうちょっと遅れてきてくれたってよかったのに。

「えーと、セント・ウィッシュボックス町、番号14番、白原 桃心」

「え!?」

あの人、フリガナ無しの名簿で、私の名前を読んだ……!?もしかしたら前に会ったことのある人だったっけ?でも私はあんな人知らない……そんなことを考えているとき……

「教官に対してその態度はなんだ!」

私がいるところから離れていたけど、大きい声だったのでよく聞こえた。

「だるいなあ……どうでもいい……」

聞き取るのが難しいガラガラした声の人が黒髪の女の子に怒られている。

「みなさん静かにしてください!」

教官が来たのでみんな元の場所に戻る。この騒動は、教官にわざとではないけどぶつかってしまい、そのときの態度が気に入らなかったことから起きたらしい。

「あの子怖いよね……おじいちゃんの代から軍人なんだってさ」

「怒らせないようにしなきゃね」

そんな話し声が聞こえてくる。
この後、兵舎の部屋番号が書かれた紙が渡され、その部屋で生活することになる。愛恩と一緒だったらいいなと思って紙を受け取った。