有紗が死んでから、私は何も考えたくなくなった。操られているかのようにあの日記には従い続けた。日記に従い続け、レジェンドにもなったが嬉しくなかった。あれだけ憧れていたのに……レジェンドになった日のことをあまり覚えていない。きっと、自分の実力でなったわけじゃないからだ。
レジェンドになって1週間くらい経ったとき、私は悪口を聞いてしまった。

「あの子なんて運が良かっただけじゃない。なんでレジェンドになれたんだろうね」

「ほんとそれ。性格も悪いし……友達が死んだ時も泣いて無かったんだよ」

昔の私なら怒っていただろう。でも、今はどうでもいい。

「やめろお前たち!」

「隊長……でも私、木札さんが班長なのは嫌なんです!」

「まあ、骸街を生きて帰ってこれたら班長って認めないことも無いけど……」

骸街とは、軍に恨みを持っている人が多く、それを知らずに行った新兵が大怪我をして帰ってきたということがこの前あったばかりの場所である。

「冗談でもそんなことを言うな!」

「隊長、私行ってきます」

隊長が止めるのを無視して外に出る。今は午後10時30分。ちょうど事件が起きやすい時間帯だ。何も考えられなくなったなら、生きていたってしょうがない。