「いつか話してくれるって思ってたから」

「テニス部で先輩から無視されたりしてたんだけど、そのうちに1年からも無視されたり嫌なこと言われたりしてるんだぁ。やめちゃおうかなって思ったけど、悔しいし、今はテニスがすごく好きだから負けたくない」

夕焼け空を見つめる瞳に、ほんのり涙がにじむのがわかった。

夕日がキラキラと輝く。

「私に何かできることあれば言ってね。それって、絶対ハナちゃんがかわいいから嫉妬してんだよ。女子って嫌だよね、そういうの」

「そんなことないよ。きっと何か嫌われることをしちゃったのかもしれないし」

と言ってから、サコタのことを思い出した。

今日のこと、桃香に話そうかと思ったけど、ちょっと重すぎて言えなかった。

これは、一生誰にも言えないかもしれない。

あ、マナ先輩にだけ話そうかな。


「桃香、あのね。神野先輩のことなんだけど。偶然話すことがあって、少しだけ友達になれたんだ」

「え?えええええ?マジ?」

驚きと同時に、小刻みにジャンプした桃香。

「あの神野先輩と?」

私がコクンと頷くと、桃香は深呼吸をしてから、私の目を見た。


「実は、私も山城先輩と1回だけ一緒に帰ったことがあるの」

「ええええええええ!!」

完全な片思いだって言ってた桃香にもそんなことがあったなんて。

「どういうこと?」

「偶然ね、帰り道で一緒になって、私がチラチラ見てたらペコって頭下げてくれたの。だから、受験頑張ってくださいって声かけたんだ。そしたら、駅まで一緒に帰ろっかって」


夢のような10分だったんだと桃香は言った。


そうだよね。

大好きな大好きな憧れの人と一緒に歩けるなんて。

夢だよね。