「さっき、迫田に会ったよ。思いっきりにらんどいたから」

「マジですか!あははは」

「実は、俺も過去に同じようなことがあったんだよ。女の先生に気に入られて、みたいな。ほんと、迷惑なだけなんだよ」


わかる気がした。

自分が教師だったら、マナ先輩みたいな生徒、気に入っちゃうに決まってる。

私は、ちょっと真剣なマナ先輩の横顔を見つめていた。

横顔だと、じっと見つめることができる。


「誰もひいきしろ、なんて頼んでねぇのにな」

「ね、ほんと迷惑ですよね」

「じゃ、今日も迫田に負けんなよ」

「はい!もちろんです。マナ先輩の試合、覗きに行こっかな~」

「サボってるとまた先輩に目付けられるぞ」

「そうですね~」

体育館裏は、風がよく通る。

ブロック塀と体育館の壁の間を通る風が、マナ先輩の頬を通って私の頬へと届く。

好きです。

マナ先輩。


心の中でそう呟いてから、私はマナ先輩に手を振った。