ただただ君が好きでした


「すいません」

と私がその場を離れようとすると、その人は想像していた声よりずっと優しい声で言った。

「泣き場所探してるなら、ここ使っていいよ。俺、もう帰るから」

「いえ、そんな。大丈夫です。先輩使っててください」

高学年の人と話すなんて、初めてだった。

「そんな怖がらなくても、大丈夫だよ。ひとりでここに来るってことは、泣きたい時だろ」

その人は、耳につけていたイヤホンを外し鞄の中に入れた。

「ありがとうございます。ちょっと部活で嫌なことがあって」

「そっか。その服はテニス部?かわいい子が揃ってるってみんなが話してたよ」

笑うと、くしゃくしゃっとなる顔が印象的だった。
どこかで見たことのある人だったけど、誰なんだろう。

「お前、テニス部の中では普通って感じだろ?他の部活してたらまあまあかわいい方なのに」

冗談っぽくそう言った後、眉を下げて心配そうに私を見つめてくれた。

この人、私を笑わせようとしてわざとこんなこと言ってくれてるんだろうな。

って、深読みしちゃう私の悪い癖。