「だけど、根本的な解決は、オハナのことをしっかりわかってもらうこと。ちゃんと付き合えば、オハナが良い子だってわかるはずだよ」

「マナ先輩・・・・・・」

ふたりで空を見上げた。
速く動く雲が体育館の屋根へと消えていく。

「さっき、言いかけたこと話します。実は、顧問の迫田がちょっと私にだけひいきみたいな感じで、わざとらしく優しくするんです」

私は迫田の顔を思い出さないように、マナ先輩の顔をじっと見つめたまま話した。

「私は、迫田のことなんて何とも思ってないし、むしろ嫌いなんですけど。先輩の中にも迫田のことを好きな人もいて、1年の中にもファンがいて。最初のきっかけはそれだったのかなって思ってて」

口先をとがらせたマナ先輩は、今まで見たことのないような鋭い目つきで私を見た。

「迫田な。アイツ、そういうヤツだから。迫田目当てでテニス部員が増えたって聞いたことある」

「そうなんですよ。どこがいいのか、私には全然わかんないんですけど」

「だな。それなら、池田の方がマシじゃね?」

「あっはははは!マナ先輩、それは禁句ですよっ!!」

池田というのは、校内で最も気持ち悪いと噂されている先生だった。