「幸い、俺も証言したし、先輩らのやったこともおかしかったから、マナトは捕まってもないし、退学にもならんかった。でも、その先輩らも退学にならんし、マナトと同じ停学だけ。なんかおかしいな、この世の中ってマナトと俺はよく言うてた」

おかしいよ、その時に誰か守ってくれる先生がいなかったのかな。

「迫田はその時、マナトのこと退学にさせた方がいいって言った教師のひとり。他にも数人の先生が退学とか言いよったらしいけど、お母さんも何度も泣きながら頭下げに来てて……」

「英語の単位がもらえなかったって言ってた、マナ先輩」

「そうそう、それもあって、授業日数とかいろいろで留年になった。俺にとったら、マナトが留年してくれたおかげでこうして同じ学年になれたんやけど」

怜次先輩は、スマホを取り出した。

「なんかあれば俺に連絡して。マナトからの伝言。怜次以外のヤツの言うことは信じるなって」

連絡先を交換し、深呼吸をした。

私は頭の中を整理しようとしたけど、ショックな出来事だらけでもうどう言っていいかもわからなかった。


「アイツ、今家庭の中も大変やろ。今は前のお父さんの苗字でおるけど再婚したら名前変わるな~って寂しそうに言ってた。マナトはお父さんと仲良かったから、寂しいんちゃうかな」

「私の家ももうすぐ再婚するんです。なんか、ほんとにマナ先輩が他人だとは思えなくて」

「それ、マナトも言うてたわ。ハナちゃんとマナトはなんか似てるな」


怜次先輩に背中をポンと叩かれて、

「ま、なんとかなるで。大丈夫や」

と言われ、大丈夫な気がしてきた。



ありがとう。怜次先輩。

ありがとうマナ先輩。

待ってるからね。



連絡してね。

オハナは、マナ先輩がいないと寂しいよ。