「……それで、今日はどうしたんだい?」


彼のその問いに、少女が真剣な顔つきへと変わった


「……少し、皆に話したいことがあるの」


「何? もしかして、この町の人間に恋でもしたのかい?」


少年は意地の悪そうな笑みを浮かべ、茶化すようにそう言ったが


少女の顔が微動だにしなかったため、余程重要な話なのだと瞬時に悟った


「...ごめん、じゃあ行こうか」


少女はその言葉に無言で頷き、少年は少し罪悪感に見舞われながら、店の奥へと入っていく


少年の後を、少女は無言のままついていった



目の前の黒い戸を、静かに横に引き開けた少年は、少女が部屋の中へ入ったのを確認すると、戸を閉め、幾つも付けられている鍵を全てかけた


ここから先にあるものは、決して部外者にバレてはならないからだ



そして、入ってすぐに見えるエレベーターに、二人で乗り込んだ


少年が自身の細長い指の先で〝地下1〟と書かれたボタンを押すと、体が一瞬浮遊感を感じ、エレベーターがゆっくりと動き出した


エレベーターが下降する時の、機械音のようなものを聞きながら、少年が少女を見ると


少女は俯き、下唇を噛み締めており、その横顔はとても重苦しい雰囲気を漂わせていた



彼女はこれから、一体何を話そうとしているのだろうか


少年がそう思った時、ポーン、と到着を告げる音が鳴り響き、エレベーターの扉がゆっくりと開いていった