アルナが目を覚ましてから数日後。
家に一羽の鳩が訪れた。
鳩は手紙を持ってやって来た。
いわゆる伝書鳩だ。
カイルは手紙を取り、すぐに読み始める。
鳩は空へと飛び立っていった。
手紙を読み終えるとカイルはすぐにアルナに伝えた。
「明日の朝、出掛けるぞ」
アルナは一瞬不思議そうな顔をしたものの、はいと答えた。

次の日の朝。
カイルとアルナは家を発った。
目的の場所までは二日かかる。
山をわけながら進んでいく。
山の中腹の険しい道のりは10歳の子供にはとても過酷なものだった。
アルナは弱音も吐かずに一生懸命歩き続けた。



歩き続けた二日間が終わり、目的の場所に辿り着いた。
辿り着いた場所はとても静かな場所だった。
森の中、その場所だけ忘れ去られてしまったかのようだった。
「あー!マインのお兄ちゃん!」
小さな子供の声がしたかと思うと、続けて本当だ、とか久しぶり、などと声がし始めた。
アルナはカイルにむかって駆け寄ってくる自分と同じ年代かそれよりも幼いかという子供たちにある異変に気が付いた。
駆け寄ってくる子供たちの髪色は全てラウン王国に多い茶色ではないのである。
色はアルナと同じ白から黒、金と様々ではあるが、皆茶色ではなかった。
「おやおや、来たかい?カイル」
突然、老人の声がした。
「はい、この子、お願いします。
 ここなら、安全かと思いまして」
「ここにいる子はみんな優しいからね」
姿を現した老人はもう七十程の老婆だった。
老婆はアルナの方を向き、言った。
「私はユラ・カッサ。よろしくね」
「わ、私はアルナ=アイリです。
 よろしくお願いします」
挨拶が終わったあと、アルナは説明を受け、この場所、<ナミル>で暮らすことを決めた。