カイルは正直、どうしようか戸惑っていた。
何故かというと、自分が暮らしている家に推定10歳くらいの少女が居るからだ。
別に勝手に入り込んできたわけではない。
戸惑っている理由はそこではない。
理由は少女が森の中で幹に寄りかかって意識を失っていて、もう2日も目を覚ましていないというところだ。
一度は見て見ぬ振りをしようとしたが、良心が許さなかったらしい。
(それにしても、どうしたもんかな…)
2日間、何とか水分は取らせてきたが、そろそろ目を覚まさないと死に至る可能性が出てくる。

「ん…」
ついに少女が目を覚ました。
「目を覚ましたか…」
カイルは少女を見ると呟き、安心したように一息ついた。
「ここは…」
アルナは体を起こそうとしたが体が思うように動かなかったのか、起こすのを諦めた。
「ここは、俺の家だ。何か食べれそうか?何も食べないで飢え死にされても困るからな」
困るという言葉を聞き、頷いた。
すると、カイルは部屋を出ていった。



アルナは一日寝ていたのが効いたのか回復していった。
反面、カイルは悩んでいた。
白色の髪を持つアルナはもし、都に出たとしても蔑みの目を向けられるであろう。
だとしたら、自分はアルナをどうしなければいけないのかということが悩みの種だったのだ。
「カイルさん…どうかされましたか…?」
考え事にふけているように見えたのかアルナは首を傾げながらカイルに尋ねた。
「何でもないよ…」

カイルにとって、アルナは気にかかる存在だった。
カイルにはマインという名の妹がいた。マインもまた、白い髪を持ち、軽蔑され、暴力を受けていた。
暴力を受けて帰ってきたとある日、マインは高熱を出した。
熱を出してから三日間程うなされていた。
高熱で散々うなされた挙げ句、この世から去った。
この世から去る一日前、マインはカイルに小さく弱々しい声で伝えた言葉がある。
それは、
「もし、私の他に同じ境遇の人に会ったら…見捨てないで。救ってあげて」
マインの言葉は聞いてあげたかった。
しかし、いざとなると中々決断ができないものだ。
今のところは何も問題はないが、今後は何があるかわからない。
(そうか…その手があったか…)
カイルは何かを思い付いたように顔をあげると家の中にある一室へと足を運んだ。