「はい。」


「あ、ありがとう。」


結局、せっかくだから花火を見てから帰ろうと言われ


私たちは待ち合わせ場所だった鳥居のある神社の石段に座り込んだ。

手には、南くんが買ってくれたカキ氷。

私は苺みるくで、南くんはレモン。


『全力で落としに来いよ』

頭の中では、さっきの南くんの言葉がエンドレス再生されてて


私の気持ちが、もしかしたら1mmも伝わってないのかなって思うと、胸がギューって苦しくなる。


「私たちしかいないね。」

「穴場だな。」


「……うん。」


ど、どうしよ。

会話続かないんですけど!!

南くんは普段からこんなもんだし…普段私って何話してるんだっけ?


テンパりすぎて、頭が回らない。

な、何か話さなきゃ!!


「…じ、神社のね、石段に座ってキスするの。」

「は?」


突然話し出した私に、カキ氷を食べる手を止めて私へと視線を向けた南くん。


「昔読んだ漫画でね、主人公の女の子が好きな人を夏祭りに誘うんだけど、

その男の子、約束の時間になっても来なくて。結局、花火始まっちゃうの。

女の子は、1人で神社の石段に座って花火を見てるんだけど、

そこに男の子が遅れてやって来て

文句を言う女の子に”黙って”って、そのまま花火が打ち上がるのと同時にキスするの。」



…言い終わってハッとする。
私は何を言ってるんだ!!