とは言え……


「何、さっきから。」

「えっ?!…いや、何も?」


顧問の先生が出張で部活が休みらしい南くんと一緒の帰り道。


『名前で呼ぶチャンス!頑張ってね!』なんて、茉央ちゃんに言われてしまった私は


いつ言おう…どのタイミングで呼ぼう…


そんな事ばっか考えちゃって、南くんに不審な目で見られる始末。


「嘘つけ、早いとこ吐いとけば?」


隠し通せるわけがない。そんな顔で私を見つめる南くんに

自分でも、隠し通せるわけがないと思っているのは私です。


でも『名前で呼びたい。』って、たったそれだけ告げるのにも、すごい緊張するし、南くんはなんて思うかな?とか

瀬那くんって……呼び慣れてなくて恥ずかしいな、とか。


乙女心は色々と複雑なんだよ。


なーんて、南くんを見上げれば相変わらず整った顔すぎて。

あー、余裕で鼻血出る。アーメン。